朗読録音が終わると、
僕が大まかな編集を行なって、とりあえず、北村青子が聴くことになっている。彼女は、音源を聴きながら、必ずブツブツつぶやいている。「 ん〜違うな 」「 私は下手だな 」「 ここやり直しだなぁ 」などなど。下手だ下手だを連呼し出すから、「 上手い表現者が、人を感動をさせる表現ができるわけじゃないよ、だったら、芸大の学生はみんな絵描きになってるわ 」と落ち込まないようにフォロー。彼女の納得ゆくようにやり直し続けたら、何年経っても配信、リリースできない。「 あのさぁ、ネットってのは、舞台のように一回性のものじゃなくて、パソコンのソフトだってアプリだって、バージョンアップしてるだろ、とりあえず配信しちゃって、1年後とかに、録音し直してバージョンアップ判を配信すればいいのだよ 」と。そのとき、ふと、大好きなピアニスト、故グレン・グールドのことが頭をよぎった。彼は完璧を求めて、ライブ演奏活動を引退宣言し、スタジオ録音や、放送媒体のみのピアニストになった。北村青子がライブ活動を引退するなどということは、万に一つもないが、録音表現には、そこでしか味わえない魅力と奥深さがあることに、彼女が気づきはじめ、やる気満々になってることは確かなようだ。
(北村青子の付き人兼、録音係より)🎧
今日も、ドラリー扉に来てくれてありがとう★