2014年03月20日

『雛』の朗読録音を終えて(3)


北村青子は舞台で培ってきた表現者なので、

声がデカイ。だから、録音の本番に入るまえ、マイクの前で、意識的に大声を出してもらって、マイクの入力調整を念入りにする。それでも、演技に熱がこもって、テンションが上がり過ぎて、とんでもない声を出す。僕はいつも「抑えて抑えて」というジェスチャーをしながら指示を送る。のだが、朗読をはじめた彼女は、恐山のイタコ、悪霊の取りついた霊媒師かのように、朗読演技に集中してしまうので、こちらはまったく無視。だから、僕のジェスチャーは、ひとりでヒゲダンスを踊ってる人になってしまう。「もう少し声を抑えられないかなぁ、テンションはそのままでいいから」と僕が言うと、「アナウンサーやナレーションの人の様にはできないのよ私は、だから、ドラマチックリーディング!」と彼女は開き直る。「今まではさ、目の前のお客さんとの関係で演技をしてきたけど、録音作品はさ、目の前のマイクとの関係を極めないと」と僕。そんな会話をしているうちに、彼女が思い出話をするのだった。
20代の頃、NHKのラジオドラマにはじめて出演したときのことだ。主演は、中村伸郎さんと岸田今日子さん。録音マイクの前で演技をするのも初体験の北村青子。ましてや、共演者は大物俳優。だから緊張のあまり、声がやたらデカくなる。緊張で声がデカくなるって不思議だと思うが、一般の人は緊張すると声が小さくなる。舞台役者は緊張すると声が大きくなり、大袈裟な演技になる。若手芸人が、うるさくて、大袈裟でしょ。あれあれ。ディレクターに、「もうちょっとマイクからさがって、そんなに大きな声を出さなくてもマイクが声をひろってくれるから」と言われ、さらに緊張。声は無意識に大きくなるいっぽう。何度かさがってと言われてしまい、緊張はMAX。彼女の緊張を察してくれたのか、岸田さんが北村の耳元で、「だいじょぶよ、だいじょぶだから、私なんか、はじめての録音のとき、さがって、さがってって言われ続け、しまいにはスタジオの壁にへばりついていたんだから」と。あの時、あの優しい言葉で声で(ムーミンのような)(笑)、どんだけ緊張がほぐれたかと、北村は切々と語っていた。


(北村青子の付き人兼、録音係より) 🎧



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posted by 北村青子 at 01:26| Comment(0) | 付き人兼、録音係兼 、AD のぼやき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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