朗読録音作品を作り上げる段階で、
『 ヴィヨンの妻 』という小説を読み込んでゆくうちに、ふと思ったのだけれども、この程度の奇行をやらかす人は( 作中の詩人大谷のこと )、僕のまわりにはけっこう存在するわけで、お前がそうだと言われるような気もしてくるし、もう亡くなったが、うちの親父は酒癖が悪く、詩人大谷よりもっとたいへんだった。酔っ払った親父を何度も投げ飛ばしたし、縄で縛り上げたこともあった。おふくろは、ビール瓶や皿で親父の脳天を殴り、血まみれにしたこともある。ヤクザやチンピラとケンカをして、ボコボコにされて肋骨を折られて帰宅なんてのも何度かあった。ブタ箱に入れられた親父をおふくろが警察に引き取りに行ったこともあったと思う。ちなみに、その親父は物理学者。だから、いつの頃か僕は、大学教授とは、社会でまともに普通に生きられない人が、運よく大学という檻の中に入れられているんだ、と感じるようになった(笑)。僕に太宰ほどの文才があったら、親父の奇行を小説に描きまくりたい。詩人大谷さんの奇行なんて可愛いもんだと。まあ、そんな故人の悪口はさておき、北村青子も感じてるようなのだけども、朗読録音作品を作っていると、おそらく、小説を黙読しただけでは、( 頭の悪い僕らだから )発見できえないだろうと思われるような新たな作品の輪郭や構造が、小説の中から、現前にポロポロと表出してくるんです。当たり前のことなんだけど、ふたりで声をそろえて、「 だから名作がぁ、名作なんだよねぇ 」って、わけのわからん共感をしている、今日この頃なのです。
『ヴィヨンの妻』後半 3部、4部 只今編集中!
5月中旬 ニューリリース予定!
(北村青子の付き人兼、録音係より) 🎧

今日も、ドラリー扉に来てくれてありがとう★
― 追記 ―
小説の中に、「酒毒」という言葉が出てくる。
この言葉をかりれば、僕も、僕の弟も、
親父の酒毒におかされた子供だとも言える。
そう考えると必然的に、僕らバカ兄弟たる所以の素性も(精神形成も)、納得できる気がするのである。
立川談志 家元曰く
「酒が人間をダメにするんじゃない。人間はもともとダメだということを教えてくれるものだ。」